判決によると、原告の眼科医と被告はいずれもニフティの会員だった。日常的に自己の意見や感想を載せるなど掲示板を利用していた。
ある日、眼科医は、掲示板の論争に実名で参加した。そして、特定の女性会員を侮辱的な表現で中傷した。この女性が被告に対処方法を相談した。
44回のいたずら電話を受けた。
被告は1997年(平成9年)5月17日未明、掲示板に眼科医の氏名、職業、診療所の住所、電話番号をたずね人のような形で書き込んだ。
1997年5月17日早朝から1997年5月18日にかけ、眼科医は44回のいたずら電話を受けた。掲載当日の診療時間内にも「居留守を使わないで」「もめ事起こしたみたいだな」などという不審な電話がかかったきた。
さらに、数日後に通信販売の商品が勝手に届くなどの被害を受けた。
電話帳に広告を出して公開している内容だ
裁判で被告は「原告自ら電話帳に広告を出して公開している内容だ。私的な情報を含まない。プライバシー侵害にあたらない」と主張していた。
裁判長のプライバシー保護の判断基準
竹中裁判長は、公表された内容が以下に該当する場合、プライバシーは法的に保護されるべきと判断した。
- 私生活上の事実または事実らしく受け取られるおそれがある。
- 一般の感受性を基準にして、当事者の立場から公開してほしくないと認められる。
- 一般に知られていない。
「知られていない情報を故意に公開」と認定
そのうえで判決では、本件については、以下の理由によりプライバシーの侵害を認めた。
「載せられた情報は、電話帳に掲載されていることを考慮しても、原告にとって掲示板では公開してほしくない事柄である。
電話帳の検索は診療を希望する人による特定の場合にすぎず、一般人には知られていない事柄にあたる。
さらに、原告が嫌がらせを受ける可能性を十分認識でき、被告の故意に基づく」
原告側代理人の牧野二郎弁護士
原告側代理人の牧野二郎弁護士によると、ネットワーク上に流れた個人情報について、裁判所がプライバシー侵害を認めたのは初めてだった。牧野二郎弁護士は、インターネット弁護士協議会代表だった。
牧野弁護士は「ネット上には表現の自由をはき違えている人も多い。歯止めとして大きな意味がある」とコメントした。