世界共通語といえば、デファクトで英語である。しかし旧約聖書に登場するバベルの塔以前の状態を再び目指すべく考案された世界共通語はエスペラント語という言語である。
この言語は、修得が容易で、かつ非常に合理的に作られており、音節の表象するところを階層型に積み上げていけば、この世の森羅万象が表現できるという驚異的な言語である。
この言語について、山本七平氏の著作からの孫引きではあるが、エスペラント語を開発した人間は大変な皮肉屋で「学ばねばならない言語をもう一つ余計に作っただけだった」とのたまったそうである。
これは、セキュリティ用語やIT用語についても同じことが言える。悪事を働くソフトウェアをマルウェアと正確に表記し、情報とコミュニケーション技術をICT(Information and Communication Tecknology)と正確に表記しても、実際にはほとんど使われないか、仮に使われたとしても、従来から普及している用語である「ウィルス」「IT」という用語に置き換えて理解する人がほとんどだ。
現在のマルウェアの主流である「悪意のソフトウェア」は、ウィルス(トロイの木馬)である。トロイの木馬の語源については割愛するが、いずれにしてもセキュリティ用語やIT用語の多くは、以前から知られている具体的物象や故事来歴から呼称が取られている。
ネットワークの内外を防御するシステムは「ファイヤウォール」「DMZ(非武装地帯)」などと呼ばれているし、セキュリティホールの修正プログラムは「パッチ(継ぎ接ぎ)」である。
これらに対する、合理的な用語は存在しているが、実際には普及しない。セキュリティ意識高揚のためにはイマジネーションを喚起する用語の使用が最適なのである。
大小数知れず存在しているセキュリティベンダーは、「パトロールサービス」という名称の統合サービスを売り込んではどうだろうか。「サイバーセキュリティのリーディングカンパニーである弊社は○○(以下営業トーク)」などと宣伝するよりは、警備員の制服を着た人間を連れて「パトロールサービス」として包括的なサービスを提案したほうが、顧客ユーザーの関心を引くであろう。
現にまだ一部ではあるが、警備会社がサイバーセキュリティに取り組んでいるケースも存在するのであるから。
(編集部 長谷部祐二)
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